いよいよ大詰めです。第九章から最後までやる予定。
シリーズとしては今回と次回の総括で終わりです。今回は長くなるかな、たぶん。
【第九章 緊急事態】
この章は完全に新設されています。今までの超リベラルな憲法では武力行使なんてありえない世の中のはずなので、内閣の権限をより素早く、直接的に行使しなければならない緊急事態など考えられない、という事だったのでしょう。
しかし、現在を生きる日本人はみんな知ってのとおり、大規模な地震が起きればそれは緊急事態であり、強力なトップダウンあってこそ解決する問題もたくさん生まれてしまいます。
ここでの緊急事態も内外からの武力行使があったときだけでなく、「地震などによる大規模な自然災害」も緊急事態として定義されています。また、立法で緊急事態を定義することもできるとあります。
内閣総理大臣は「法律の定めうるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」となっています。そして第2項により、法律の定めるところにより、「事前又は事後に国会の承認を得なければならない」とされています。
つまり、閣議決定すれば国会の承認がなくてもとりあえず緊急事態宣言を出すことができるという事です。
百日ごとに国会の承認を得なければならないとありますが、緊急事態宣言を解除するのは閣議を経て内閣総理大臣が行うとあります。
国会の承認における衆議院の優位性は第六十条の2項を準用するとあります。ただし、期間は30日でなく5日と読み替えるとされています。
緊急事態宣言時に内閣が特別に行えることは以下です。
- 法律と同等の効力を持つ政令を制定することができる。ただし事後に国会の承認が必要。
- 財政上必要な支出その他の処分ができる。ただし事後に国会の承認が必要。
- 地方自治体の長に必要な指示をすることができる
- 生命・財産を守るための公の指示には「何人も」従わなければならない
- 公はこの場合においても基本的人権は「最大限に尊重」しなければならない
- 緊急事態中は衆議院は解散されない。任期については特例を設ける
僕が感じる懸念は、まず人権を「最大限に」尊重するという部分。これは一見聞こえはいいですが、今まで未来に渡って侵されないとしていたものを緩めています。
つまり緊急事態宣言時は人権をないがしろにする場合もあり得るよという事。外敵による有事の際はスパイ容疑がかけられたときに緊急性が高いという理由で侵害されるかもしれない。内乱時は公の秩序を守るためという理由で人権を尊重されない措置を受けるかも知れない。
次に懸念を持っているのが「衆議院は解散されない」という部分。緊急事態中は内閣が何やっても無敵状態という事。衆議院では第一党の政府。緊急事態中も優位性が保障される衆議院。しかもやりたいことを素早く直接的に実施できる。
これ、内乱を想定していますよね?反政府デモが大規模な形で行われたときに「公の秩序と生命・財産を守るため」という理由で緊急事態宣言が出された場合、事態が収拾するまで内閣の安泰が保障されるという事。反対勢力がおとなしくなるまで。
つまり僕には、「選挙以外の方法で政府を弾劾する動きがあった場合は国防軍による武力行使も辞さないです。反政府結社も公の秩序を乱すから徹底的に排除しますよ。」と言っているように聞こえてしまうんです。
まぁ思い過ごし…ですよね?国内に入り込んだ敵性国家分子による武力蜂起を阻止するためですよね?
【第十章 改正】
ここに今話題の九十六条の改正が記載されています。実際の改正案ではこれより以前に新設された条文がありますので、第百条として記載されています。「衆議院又は参議院の議員の発議により」議決に回され、「両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成」で国民審査にかけられる。法律で定められる国民投票を実施し、「有効投票の過半数の賛成」で改正とするとなっています。
議院なら誰でも発議できるんですね。この改正についてはすでに議論になっているので詳しい説明は不要でしょう。僕は反対ですが。だって過半数だとちょっと強い与党であれば簡単に改正出来ちゃうでしょ?それって今みんなが思う必要な修正じゃないと思うんです。
しかも国民投票も「有効投票の」過半数という、最近の日本の投票率の悪さを考慮に入れた加筆がされています。これなら支持母体に訴えて賛成の組織票を入れれば随分通りやすくなると思います。
【第十一章 最高法規】
ここで特筆すべき修正は2点。
第九十七条の基本的人権に関する有名な条文が削除されたこと。
第九十九条が第百二条、憲法尊重擁護義務として、今まで天皇と大臣以下公務員に対して憲法を尊重する義務を明記していたのを、第一に国民が尊重しなければならないとし、天皇と摂政を擁護義務から外しているということ。
削除された文章、書いときますね
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在および将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
…これ削除しちゃダメでしょ?
2つ目の修正もどうかなと。最初に書いたと思いますが、そして最後にも書くと思いますが、憲法はやはり権力者たる内閣、国会、司法を制限するためにあるという一面が非常に重要だと僕は考えています。
むしろそのためだけにあれば機能すると思うくらい。
国民を縛り付けるのはいかがなものかと思うのです。
さて、これで最後まで主だった修正点をすべて見てきました。
掻い摘んで僕の私見を述べさせてもらいました。
次回、総括します。
全体的にどうしたらいいと思うか書いておきます。
しかし、結構大変だったな、これ。。。(笑)
→次回 ど素人が憲法改正案を読んでみた その9
0 件のコメント:
コメントを投稿